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東京地方裁判所 昭和53年(特わ)3286号 判決 1979年3月19日

被告人

本籍

東京都世田谷区瀬田五丁目二二九番地

住居

東京都世田谷区瀬田五丁目三五番六号

職業

会社員

辻本と志枝

大正一二年一一月一二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官五十嵐紀男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月および罰金三、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、全五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都千代田区外神田一丁目九番六号において、「信越電機商会」の名称で電機部品小売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名の定期預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五〇年分の実際総所得金額が六三、〇九〇、一六二円(別紙(一)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、昭和五一年三月五日、東京都世田谷区玉川二丁目一番七号所在の所轄玉川税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三、一六四、四九九円でこれに対する所得税額が二一三、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額三二、九〇八、七〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額三二、六九四、八〇〇円を免れ

第二  昭和五一年分の実際総所得金額が九〇、一五六、二九七円(別紙(二)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、昭和五二年三月三日、前記玉川税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二、九〇〇、二五〇円でこれに対する所得税額が二〇七、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額五二、四八四、五〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額五二、二七六、九〇〇円を免れ

第三  昭和五二年分の実際総所得金額が六七、九五一、一一四円(別紙(三)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、昭和五三年三月一〇日、前記玉川税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が九七〇、〇〇〇円でこれに対する所得税額は一二、七〇〇円であるが、源泉徴収税額が一二、七〇〇円であるため納付すべき税額はない旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額三六、四一六、四〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右源泉徴収額との差額三六、四〇三、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判事冒頭の事実及び全般にわたり(甲番号は検察官証拠請求番号を示す)

一、被告人の当公判廷における供述

一、同じく検察官に対する各供述調書(二通)

一、収税官吏の被告人に対する各質問てん末書(八通)

一、辻本昭夫の検察官に対する供述調書(甲22)

一、収税官吏の諸星信夫に対する質問てん末書(甲5)

一、諸星信夫の検察官に対する供述調書(甲23)

一、押収してある辻本昭夫にかかる昭和五一年、昭和五二年確定申告書各一袋(当庁昭和五四年押第三四一号符四、五)

一、押収してある昭和五二年所得税確定申告書控一綴(前同押号符六)、各青色申告者書類つづり各一綴(前同押号符七、八)

判示第一、第二、第三の各事実添付の別紙(一)、(二)、(三)の修正貸借対照表に掲げる各勘定科目別過年度金額及び当期増減金額欄及び当期増減金額欄記載の数額につき

<現金>

一、収税官吏熊沢征作成の現金調査書(甲1)

<普通預金・定期預金・定期積金・郵便貯金>

一、収税官吏熊沢征作成の預貯金調査書(甲2)

<たな卸資産>

一、収税官吏熊沢征作成のたな卸資産調査書(甲3)

一、収税官吏の辻本昭夫に対する質問てん末書(甲4)

一、収税官吏の諸星信夫に対する質問てん末書(甲5)

一、辻本昭夫の検察官に対する供述調書(甲22)

<貸付金>(昭和五〇年、昭和五一年のみ)

一、収税官吏熊沢征作成の貸付金調査書(甲6)

一、中村廣作成の借入金の明細と題する書面(甲7)

<敷金>

一、収税官吏熊沢征作成の敷金調査書(甲8)

<権利金>(検察官において「営業権」と表示したもの)

一、収税官吏熊沢征作成の営業権調査書(甲9)

一、同じく減価償却費調査書(甲13)

一、収税官吏の諸星信夫に対する質問てん末書(甲5)

<出資金>

一、城南信用金庫瀬田支店川村雅男作成の証明書(甲10)

<建物>(昭和五〇年、昭和五一年のみ)

一、収税官吏熊沢征作成の建物調査書(甲11)

一、同じく減価償却費調査書(甲13)

<繰延資産>

一、収税官吏熊沢征作成の繰延資産調査書(甲12)

一、同じく減価償却費調査書(甲13)

<備品>(昭和五〇年、昭和五一年のみ)

一、収税官吏熊沢征作成の減価償却費調査書(甲13)

<買掛金>

一、収税官吏熊沢征作成の買掛金調査書(甲14)

<預り金>

一、収税官吏熊沢征作成の預り金調査書(甲15)

<事業主借・事業主貸>

一、収税官吏熊沢征作成の事業主勘定調査書(甲16)

<専従者給与等>(昭和五〇年、昭和五一年のみ)

一、大蔵事務官大場裕太郎作成の証明書(甲17)

一、押収してある青色申告者書類つづり一綴(前同押号符7)

<事業専従者控除額>

一、大蔵事務官大場裕太郎作成の証明書(甲17)

<元入金>

各年分貸方過年度金額の元入金の計算は、同年分の過年度金額の借方科目合計額と貸方科目合計額との差額である。なお昭和五一年分借方当期増減金額欄の金額については、収税官吏熊沢征作成の減価償却費調査書(甲13)により建物の簿価相当額を減算した。

<雑所得>

一、収税官吏熊沢征作成の預貯金調査書(甲2)

別紙(一)、(二)、(三)各修正貸借対照表に掲げた公表金額及び過少申告の事実について

一、押収してある被告人の昭和五〇年分、昭和五一年分、昭和五二年分所得税確定申告書各一袋(当庁昭和五四年押第三四一号符一、二、三)

税額計算における社会保険料控除と生命保険料控除の実際額につき

一、検察事務官佐野周二作成の昭和五四年二月一〇日付捜査報告書(甲21)

(法令の適用)

判示各所為につきいずれも所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑を併科)。

判示各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑につき、刑法四七条本文、一〇条(判示第二の罪の刑に加重)。

罰金刑につき、刑法四八条二項。

労役場留置につき、刑法一八条。

懲役刑の執行猶予につき、刑法二五条一項。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 松澤智)

別紙(一)

修正貸借対照表

辻本と志枝

昭和50年12月31日

<省略>

別紙(二)

修正貸借対照表

昭和51年12月31日

<省略>

別紙(三)

修正貸借対照表

辻本と志枝

昭和52年12月31日

<省略>

別紙(四)

税額計算書

辻本と志枝

<省略>

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